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20190312 ビールを知らない、選べない

〜 オランダの新鋭  トミーシュフとネイヴェル 〜

Tommieが商業的に『TommieSjef』を名乗り始めたのが4年前。もともとは『ホームブレンダー』でした。10代の頃から来るまでベルギーに出向き、ウォートを買って家でブレンドしていたそうです。

自分の出会いは、おそらく1年半くらい前です。知り合いのお土産で飲みましたが、正直、当時はピンと来ませんでした。その頃はまだ、「サワーといえばランビック!」な風潮が自分の中にもあったので、複雑さが足りないように感じた気がします。その原因が当時のTommieのクオリティーなのか、自分のスキルなのか確認はできませんが、たぶん自分のスキルの問題です(笑)その頃からレーティングサイトでは高得点だったので。
ヨーロッパでのクラフトビールブームが一段落した2,3年前、「次はワイルドイーストだ!」といっていくつかのワイルドイーストのブルワリー・ブレンダーがスタートしました。Tommieはその流れの先頭を引っ張ることになった存在です。これには理由があり、『野生酵母で醸すサワーエール=ランビック(ベルギーのみ)』というイメージが長年続いてきた中、Tommieはオランダだったからです。ジェスターキングなんかと同じような立ち位置。「ベルギー以外でこんなに美味しいサワーが造れるなんて!」と業界がざわざわしていたのを覚えています。

これはものすごく裏話ですが、Tommieは前社の時に1回断られています。しかし、DIG THE LINEを始めるタイミングで連絡が取れ、輸出もしてくれることになったので、個人的にとても縁を感じています。今回Tommieに訪れ、「輸出するよ」と言ってくれたのが自分の誕生日だったこともあって、勝手に感動しています。勝手に都合よく捉えるのは長所です(笑)この直後に、乗り継ぎ線でスーツケースをなくしたので、人生って上手くできているんだなと納得した記憶があります。



ここのビールは、ベースビールが1種類です。バレルと二次発酵だけでそれぞれの特徴をつくります。Bokkeはバレルやグレープに合わせて、ベースビールを調整しているのでアプローチが異なります。飲んだイメージだと、Bokkeの方がクリアでフルーティーさが前にくるけど、Tommieの方が複雑で色々な要素で1つの味を構成してバランス最高、な感じです。

また、Tommieの方が圧倒的にモルティーです。使っているウォートの影響だと思いますが、ここはオランダのVandenbroekとNevelのウォートも使っています(Bokkeはランビックのみ)。この2社も別々に飲みましたが、Tommieの味が納得できます。非常にモルティーで酸味は穏やか。オランダ人の味覚の嗜好がでているのかもしれません。
訪れた時にベースビールをストレートで飲ませてもらいました(ベルギーとオランダから買ってきたウォートをブレンドして1年発酵させたもの)が、今回のヨーロッパで一番の衝撃でした。人生で口に含んだ液体の中でトップクラスに美味しかったです(ヨーロッパに酔ってる感も確実にあります)。しかも、酸っぱくありません。これはいつかオランダに行って、必ずみんなに飲ませたいです。

最後に1つ。彼はまだ25歳で高校生みたいな見た目をしています。ブレンダーはブルワーよりも難易度が高く(レシピで造れないから)、10年のキャリアでも美味しいものは造れないのが通説ですが、彼は控えめに言って天才です。