wild ale in Netherlands
〜 オランダのワイルドエールとの出会い 〜
- Journal Vol.1 -
ワイルドエールに出会ったのは2015年のこと。はじめはベルギー以外でつくったランビックでしょ?くらいに思っていたワイルドエールに対して、見方が変わるきっかけをくれたのが2016年に出会ったTommie Sjef(トミーシュフ)でした。そして、その3年後、ワイルドエールが広がっていくことを予感させてくれたのが2019年アムステルダムで出会ったNevel Wild Ales(ネイヴェル)。
偶然にも転機となるきっかけをくれた作り手は両方ともオランダで、ビールに関してはハイネケンくらいしかイメージのなかったオランダが思い入れの強い国になった瞬間だと記憶しています。
現在ワイルドエールは世界中でつくられるようになりましたが、スタイルの定義が広く、すべてが自然発酵とは限りません。もちろんベルギーのランビックのように自然発酵で醸造する作り手もいますが、培養した自分自身の酵母でつくるビールをベースとして使用することが多い。
しかし、木樽で熟成をしていくなかでブレタノマイセスや他の酵母や細菌もビールに加わって味わいを作り上げていくため、それがワイルドエールというビールの定義になっているのが現状です。「ビール」には、長い歴史も国ごとに確立された定義もありますが、一般的な「ビール」のイメージをワイルドエールに当てはめると途端に理解が難しくなるように感じます。
一方で、ワイルドエールとナチュラルワインとの親和性が話題になることをよく見かけます。
ナチュラルワインは、外部からの介入を最小限に抑えてブドウを栽培し、樽の中で自然に発酵させます。発酵と熟成のプロセスは時間をかけて平穏に進行し、作り手は適切なタイミングで適切な判断を下す。近隣の環境への適応や時間経過の許容、そして、作り手の判断が最終的なワインの個性をつくる。
ワイルドエールは、ナチュラルワイン醸造家の発想にビールの製法を持ち込んだ存在と捉えるのが自然かもしれません。そして、ビールの製法を持ち込むことにより、熟成前のベースビールや副原料にも無数の選択肢があり、味わいの幅が広い。それが今のワイルドエールだと考えます。
ワイルドエール自体は歴史の浅いお酒ですが、作り手たちがワイルドエールと共にどんな未来を切り開いていくのか楽しみで仕方ありません。